2020.03.03

ターンアウトがどうしても必要な理由

岸本 亜沙美

岸本 亜沙美
ターンアウトがどうしても必要な理由

目次

●ターンアウトの一番の意義はその「形」ではなく、トルネードのようなエネルギーが生み出せることで、その力の伝達によって「引き上げ」も生まれ、様々な動きに有効に活用できる、まさに「力の源」になります。

 

そして究極は、ターンアウトが出来れば出来るほど渦の力が集約されて高まり、増幅されたエネルギーが体を絞るように安定させたり、外へと解放されほとばしります。

 

そんな「凄い力」を持つ真のターンアウト…。しかし、そんな力があること自体わからなくする、すべてを台無しにするようなことがあるとしたら…。

 

 

~バットマン・タンデュの横を「真横」ではなく、「斜め前」に足を出すことの考察~

 

 

足を真横に向けたターンアウトのポジションが出来ない場合、横のタンデュは斜め前に出す…

これは膝と爪先の方向を同じにし、捻った足にならないようにタンデュするためには致し方なく、解剖学的には正しい足の出し方です。

 

しかし、それによって幾つもの矛盾が生じてしまうことに気付いていますでしょうか?

 

まず、バーレッスンの「プリエ」

1番から2番にポジションを移行する時は横にタンデュして2番に足を置きますが、(ワガノワメソッドではこの時決して足を踏み変えてはいけない決まりです)

 

斜め前に足を出してその場に下ろしたら体の前に足がいき、軸足の横には並ばなくなってしまいますね。

両足が横一列にならず、そのままでは第2ポジションのプリエは始められません。
(この時爪先の向いた方に足を出してそのまま下ろすという原則通りにしていればの話ですが、皆そうではないので普通にプリエしていますね…)

 

 

・バットマン・タンデュの時も、横にタンデュした足の踵を下ろしたり(プール・ル・ピエ)、2番のプリエに移行したりという動きも入って来ますが、

そこでも同じようなことが起きてしまいます。

 

とにかく斜め前だと軸足と同じ所には絶対に並ばないですから、すべてがややこしく、肩までズレてしまいそうです。

 

そして大事なのは「なぜそのような動きを練習する必要があるのか」という点です。

 

本来はバレエに適した体を作ったり、スムーズな動きを学ぶためのもの。

 

本当は斜め前ではバレエの体は一切作られず、踊る時のスムーズな動きにも役立つどころか妨げになってしまいます。

 

 

・そして、ロンドジャンブの時。

 

床の上、或いは空中で、前から横~後ろ(またはその逆)と脚を回す動きですが、

 

どうしても真横を通らずには出来ない動きのはずです。

その際、真横に正しく足が出せない人はどのようにしてロンドジャンブをしたらいいのでしょうか?

真横を通る時、本来は膝を真上に向け踵は真下に向けた正しいターンアウトで通ります。

しかし、それが出来ない人は真横を通る時、膝を前に向けた内足で通過せざるを得ないと思うのですが、それで良いのでしょうか?

 

もし真横を通過する時に膝を前に倒してはいけないと注意され、そう出来るのであれば、それは既にきちんとターンアウト出来るという意味なので、

それならタンデュの時からきちんと横に出すべきではないでしょうか?

 

出来ないのならばロンドジャンブも正しく出来なくなりますし、それでもやるなら掟やぶりの悪いやり方になってしまいます。

 

レッスンの動きのほとんどが、それを正しく行うことで体の繋がりを強固にしたり、その繋がりの中で力を伝え合い、助け合って動きを生み出したりといった、かなり高度な連鎖運動を起こしてテクニックや安定性を作り出しています。

 

ロンドジャンブもただ脚を回せばいいわけではありません。

 

 

●また、足を出す方向はその方向に移動することも意味しています。

横のタンデュが斜め前ということは、その人にとって真横はない、つまり真横に移動することは出来ないということになってしまいます。

グリッサードやシソンヌ、トンベやパドブレ、バランセなども全て斜め前で良いのでしょうか?

 

舞台の8つの方向で言うならば3番と7番ですが、それは守らなくても良いのでしょうか?

 

また、エカルテは身体の方向は斜めですが、足の出し方は自分にとって実質は横です。

 

肩の下に足があり、対角線上に出されていなければならず、そうでなければとても不恰好なポーズになってしまいます。

 

●そして、アラスゴンド(2番へ、つまり横方向への意)でもそうですが、脚が上体の延長線上にあればこそお互いが繋がり、引き合って協力し合うことで相関関係を学んでいったり、それに適応した身体が作られるのであって、上体の横にないのであればそういうことが起こらず、関係性も理解出来ないのではと思います。

 

々そういう「引き合いの原理」で身体の操作を学び、上体の筋肉が作られていくものなのです。

 

横に伸びた脚に引っ張られないように反対側の筋肉で引っ張り合って抵抗をかけるとか、そういうことです。

 

 

・まだあります。
エシャッペはどうでしょうか?

ポワント(ルルベ)のエシャッペもジャンプのエシャッペも同様ですが、両足を同時に横に出して爪先に立ったりジャンプする動きです。

この時ばかりは「両足一緒に斜め前に出す」なんてあり得ないですが…
(やってみて下さい!両足一緒に体より前に足が行くのですよ!転んじゃいませんか!?)

 

そんなこと出来るわけがないので、もし足が斜め前に向いた5番からやる場合でもタンデュの時に言われている「爪先の向いている方向に足を出す」という原則ではなくなってしまいます…。

 

このように考えていくと、あらゆる動きにどうしても矛盾が出て来てしまうのです。

 

その矛盾こそが、身体の操作を曖昧にし、体幹との関係も生まれず、それによって体幹の筋肉の使い方も学べず筋力も付かないのです。

 

確かにターンアウトが足りなかったら足を捻ってまで無理矢理やるべきではありません。
解剖学的には膝と爪先の方向を同じにしてタンデュすることが正しいです。

 

しかし、本当に厳格に考えていくと動きの中ではそれでは正しく出来ないことがわかります。

 

バレエの厳格な決まり事や正しさを追求していくと、やはり真横へのターンアウトはどうしても必要になってくるのです…。

 

●実際に踊る時には不可能なこと、やったらおかしなことになることをバーレッスンの時にだけするのであれば、「基礎レッスンが踊りの土台作り」とはならなくなってしまいます。

 

この矛盾を解決するには、やはり少しでも正しいターンアウトが出来るようにするしかない…

 

バレエとは本当に難しいものだなと思います。本当に容易くはないです。

 

しかし、なぜこのような事をお話しているかというと、正しい立ち方をしっかり学び、どうしたら良いか理解できるレッスンをきちんとしていったら、もっとターンアウトができる人達をたくさん見てきたからです。

 

安全な体の使い方をきちんと学び、痛めないように段々と進歩させて少しでも正しいターンアウトが出来るように訓練していって欲しい、

 

そのためには解剖学的理解も絶対に必要ですが、「斜め前で当たり前」という意識ではなく、1ミリでも向上するようにレッスンを心がけて欲しいと思います。

 

正しいターンアウトが出来れば、それを崩すことなくレッスンする中でどんどん体の使い方が理解でき、ターンアウトが使えるようになって、それが身体中を強くし、更にターンアウトがパワーアップしていくようになるのです。

それは私自身が経験し、ターンアウトは本当に大変で、きちんと出来るまで安易に踊れないけれど、どんどん本物に近づいていくのを感じ、喜ばしく思ったものです。

 

私が特別良い身体を持っていたからではありません。ターンアウトの大切さが心底わかり、またとても良い指導を受けることが出来たからです。

 

ターンアウトはどうしても必要で、それによって身体の使い方が正しくならざるを得ず、全身を強化するにも物凄く大切でこれに勝るものはないとわかりました。

 

ターンアウトはただの形ではなく、最大の「安定」と「動く力」として使うものなので、必要な理由は他にもたくさんありますが、本当の「正しさ」やその意味をしっかりと考えることが大切なのではないでしょうか。

 

 

【ターンアウトが必要な理由〈2〉ターンアウトを使うってどういうこと?】

【ターンアウト(アン・ドゥオール)を向上させるには】はこちら

 

 

東京世田谷区|ワガノワメソッドを極める本気改善バレエ教室 アサミバレエクラスへ興味を持たれた方はまずは体験レッスンにお越し下さい。

●ターンアウトの一番の意義はその「形」ではなく、トルネードのようなエネルギーが生み出せることで、その力の伝達によって「引き上げ」も生まれ、様々な動きに有効に活用できる、まさに「力の源」になります。

 

そして究極は、ターンアウトが出来れば出来るほど渦の力が集約されて高まり、増幅されたエネルギーが体を絞るように安定させたり、外へと解放されほとばしります。

 

そんな「凄い力」を持つ真のターンアウト…。しかし、そんな力があること自体わからなくする、すべてを台無しにするようなことがあるとしたら…。

 

~バットマン・タンデュの横を「真横」ではなく、「斜め前」に足を出すことの考察~

 

足を真横に向けたターンアウトのポジションが出来ない場合、横のタンデュは斜め前に出す…

 

これは膝と爪先の方向を同じにし、捻った足にならないようにタンデュするためには致し方なく、解剖学的には正しい足の出し方です。

 

しかし、それによって幾つもの矛盾が生じてしまうことに気付いていますでしょうか?

 

まずバーレッスンのプリエ

1番から2番にポジションを移行する時は横にタンデュして2番に足を置きますが、(ワガノワメソッドではこの時決して足を踏み変えてはいけない決まりです)

斜め前に足を出してその場に下ろしたら体の前に足がいき、軸足の横には並ばなくなってしまいますね。

 

両足が横一列にならず、そのままでは第2ポジションのプリエは始められません。
(この時爪先の向いた方に足を出してそのまま下ろすという原則通りにしていればの話ですが、皆そうではないので普通にプリエしていますね…)

 

・バットマン・タンデュの時も横にタンデュした足の踵を下ろしたり(プール・ル・ピエ)、2番のプリエに移行したりという動きも入って来ますが、そこでも同じようなことが起きてしまいます。

 

とにかく斜め前だと軸足と同じ所には絶対に並ばないですから、すべてがややこしく、肩までズレてしまいそうです。

 

そして大事なのは「なぜそのような動きを練習する必要があるのか」という点です。

 

本来はバレエに適した体を作ったり、スムーズな動きを学ぶためのもの。本当は斜め前ではバレエの体は一切作られず、踊る時のスムーズな動きにも役立つどころか妨げになってしまいます。

 

 

・そして、ロンデジャンブの時。

 

床の上、或いは空中で、前から横~後ろ(またはその逆)と脚を回す動きですが、どうしても真横を通らずには出来ない動きのはずです。

その際、真横に正しく足が出せない人はどのようにしてロンデジャンブをしたらいいのでしょうか?

真横を通る時、本来は膝を真上に向け踵は真下に向けた正しいターンアウトで通ります。

 

しかし、それが出来ない人は真横を通る時、膝を前に向けた内足で通過せざるを得ないと思うのですが、それで良いのでしょうか?

 

もし真横を通過する時に膝を前に倒してはいけないと注意され、そう出来るのであれば、それは既にきちんとターンアウト出来るという意味なので、それならタンデュの時からきちんと横に出すべきではないでしょうか?

 

出来ないのならばロンデジャンブも正しく出来なくなりますし、それでもやるなら掟やぶりの悪いやり方になってしまいます。

 

レッスンの動きのほとんどが、それを正しく行うことで体の繋がりを強固にしたり、その繋がりの中で力を伝え合い、助け合って動きを生み出したりといった、かなり高度な連鎖運動を起こしてテクニックや安定性を作り出しています。

 

ロンデジャンブもただ脚を回せばいいわけではありません。

 

 

●また、足を出す方向はその方向に移動することも意味しています。

横のタンデュが斜め前ということは、その人にとって真横はない、つまり真横に移動することは出来ないということになってしまいます。

グリッサードやシソンヌ、トンベやパドブレ、バランセなども全て斜め前で良いのでしょうか?

 

舞台の8つの方向で言うならば3番と7番ですが、それは守らなくても良いのでしょうか?

 

また、エカルテは身体の方向は斜めですが、足の出し方は自分にとって実質は横です。

 

肩の下に足があり、対角線上に出されていなければならず、そうでなければとても不恰好なポーズになってしまいます。

 

●そして、アラスゴンド(2番へ、つまり横方向への意)でもそうですが、脚が上体の延長線上にあればこそお互いが繋がり、引き合って協力し合うことで相関関係を学んでいったり、それに適応した身体が作られるのであって、上体の横にないのであればそういうことが起こらず、関係性も理解出来ないのではと思います。

 

々そういう「引き合いの原理」で身体の操作を学び、上体の筋肉が作られていくものなのです。

 

横に伸びた脚に引っ張られないように反対側の筋肉で引っ張り合って抵抗をかけるとか、そういうことです。

 

 

・まだあります。

エシャッペはどうでしょうか?

ポワント(ルルベ)のエシャッペもジャンプのエシャッペも同様ですが、両足を同時に横に出して爪先に立ったりジャンプする動きです。

 

この時ばかりは「両足一緒に斜め前に出す」なんてあり得ないですが…

 

(やってみて下さい!両足一緒に体より前に足が行くのですよ!転んじゃいませんか!?)

 

そんなこと出来るわけがないので、もし足が斜め前に向いた5番からやる場合でもタンデュの時に言われている「爪先の向いている方向に足を出す」という原則ではなくなってしまいます…。

 

このように考えていくと、あらゆる動きにどうしても矛盾が出て来てしまうのです。

 

その矛盾こそが、身体の操作を曖昧にし、体幹との関係も生まれず、それによって体幹の筋肉の使い方も学べず筋力も付かないのです。

 

確かにターンアウトが足りなかったら足を捻ってまで無理矢理やるべきではありません。

 

解剖学的には膝と爪先の方向を同じにしてタンデュすることが正しいです。

 

しかし、本当に厳格に考えていくと動きの中ではそれでは正しく出来ないことがわかります。

 

バレエの厳格な決まり事や正しさを追求していくと、やはり真横へのターンアウトはどうしても必要になってくるのです…。

 

●実際に踊る時には不可能なこと、やったらおかしなことになることをバーレッスンの時にだけするのであれば、「基礎レッスンが踊りの土台作り」とはならなくなってしまいます。

 

この矛盾を解決するには、やはり少しでも正しいターンアウトが出来るようにするしかない…

 

バレエとは本当に難しいものだなと思います。本当に容易くはないです。

 

しかし、なぜこのような事をお話しているかというと、正しい立ち方をしっかり学び、どうしたら良いか理解できるレッスンをきちんとしていったら、

もっとターンアウトができる人達をたくさん見てきたからです。

 

安全な体の使い方をきちんと学び、痛めないように段々と進歩させて少しでも正しいターンアウトが出来るように訓練していって欲しい、

 

そのためには解剖学的理解も絶対に必要ですが、「斜め前で当たり前」という意識ではなく、1ミリでも向上するようにレッスンを心がけて欲しいと思います。

 

正しいターンアウトが出来れば、それを崩すことなくレッスンする中でどんどん体の使い方が理解でき、ターンアウトが使えるようになって、それが身体中を強くし、更にターンアウトがパワーアップしていくようになるのです。

それは私自身が経験し、ターンアウトは本当に大変で、きちんと出来るまで安易に踊れないけれど、どんどん本物に近づいていくのを感じ、喜ばしく思ったものです。

 

私が特別良い身体を持っていたからではありません。ターンアウトの大切さが心底わかり、またとても良い指導を受けることが出来たからです。

 

ターンアウトはどうしても必要で、それによって身体の使い方が正しくならざるを得ず、全身を強化するにも物凄く大切でこれに勝るものはないとわかりました。

 

ターンアウトは、ただの形ではなく、最大の「安定」と「動く力」として使うものなので、必要な理由は他にもたくさんありますが、本当の「正しさ」やその意味をしっかりと考えることが大切なのではないでしょうか。

 

【ターンアウトが必要な理由〈2〉ターンアウトを使うってどういうこと?】

【ターンアウト(アン・ドゥオール)を向上させるには】はこちら

 

 

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