本物のバレエの道

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2017.04.20ターンアウトの先にある”本物”~バレエの本当の難しさ~

『ターンアウトすることでしか得られない筋肉とそれをコントロールする術を身につけることがレッスンの意味です』

 

●ターンアウト(アン・ドゥオール)はクラシックバレエにとって不可欠なものですが、脚を外旋すること自体もさることながら、実はその先の訓練のあり方が最も重要で、本当にきちんと理解していないといけない事なのです。

脚を外旋したことによって普通の体とは全く違う筋肉ラインで立たなくてはならなくなるため、体の支え方を一から作り直す作業が必要になって来ます。

 

それは脚の筋肉だけではありません。ターンアウトすると脚の筋肉だけではなく上半身の筋肉の状態も変化します。体中の筋肉が適応しないと完全に横を向いた脚の上にきちんと立つことは難しいのです。

脚のみならず全身の筋肉、特に発達が難しいインナーマッスルが深く関係するので、難しさの質が格段に違います。

 

●それが日々のたゆまぬ基礎訓練の目的であり、どんなに地味であっても時間がかかっても、非常に大切なバレエ人生を左右するレッスンです。

体が完成する過程によって何を行うべきか詳細に決められています。

 

しかし、それは付け根からきちんとターンアウトした場合であり、膝や足首を捻って足先だけで開いたように見せかけた間違ったターンアウトでは腿や上体の筋肉の状態は変わらず、上半身の筋肉の正確性や強さはさほど必要になりません。

根元から回さない脚は普通に前を向いた状態と大して変わらず、上体を変化させる必要がないからです。

その状態でいくらテクニックが出来たとしてもそれは本当に付け根から脚を回して完成させた技術とは全く比較になりません。

 

ターンアウトを完全にすればするほど、その状態でポーズを保つことは非常に困難になります。

同じ回転や跳躍でも、不完全なターンアウトときちんとしたターンアウトで行うのでは難しさが何倍も違うのです。

ターンアウトしない状態で出来た技術など何の意味も持たなくなってしまいます。

 

●また、付け根から正しくターンアウトしないと絶対に育たない筋肉があり、それが美しく正確に踊るための最も重要な筋肉になります。

太く発達しない性質の筋肉で、体を引き締める効果が絶大にあり、体型を美しく整えるための重要な筋肉でもあります。しかし、その筋肉を育てるのには非常に厳格で慎重なレッスンが絶対に不可欠で、体の発達と理解力にも関わってくるので本当にきちんとしたレッスンを日々積み重ねる以外にありません。

また、ターンアウトが不正確だと逆にターンアウトを邪魔する筋肉が発達してしまい、余計にターンアウトが出来なくなるという悪循環にも陥ってしまいます。

 

●本物といっているバレエの技術は、ターンアウトによって得られた非常に効率の良いエネルギーを無駄なく利用して操っているものなのです。ターンアウトはバレエの技術の法則をより自然に導いてくれる最大の力であり、だからこそこうでなくてはという法則が出来上がっていったものです。

つまり、最初からターンアウトありきの技術であり、体に入ってしまえば決して不自然で奇異なものではなく、本当にバレエの法則の中で体を自在に操れる大きな原動力になります。

 

それを称して理にかなったもの、力学的に実証可能な優れものといっている訳です。必要最小限の力で最大のエネルギーを取り込んで動くことが可能になるのですが、自在に操れるようになるためにはそのための段階的な訓練が絶対に欠かせません。

 

●ターンアウトが出来ない、不完全では本当のバレエは始まらない-

そもそも正しいターンアウトが出来ていない人は体のコントロールの仕方が全く違ってしまい、教師の注意の意味が頭でも体でも理解することが難しくなってしまいます。

教師が求めるコントロールが体に見つからないため、頭での理解も得にくくなり、教師との相互理解による共感が得られなくなってしまうのです。

教師の言うことが理解出来ない、生徒はなかなか言う通りにならない、とお互いにジレンマを抱える要因ともなってしまいます。

 

●ターンアウトの本当の価値はそれによって得られる筋肉の感覚とエネルギーです。

爪先をどのくらい開くかとか形だけの問題ではなく、付け根から外旋したことによってしか体得出来ないコントロールを自分の体に持つことが最も重要なのです。

 

人体の構造は実に精密です。筋肉は細かいパーツに分かれ、それぞれの役割と働きを精密に持っています。

働かせたい筋肉があるべき場所にきちんと揃って初めてしっかりとその機能を果たすことが可能になります。

あるべき場所がずれているときちんと機能を果たすことが出来ず、代わりに不必要な筋肉を過剰に使ったり、本来の目的とは違った働きをしてしまいます。

正しい姿勢が何より大事なのはそのためです。

 

●股関節から完全なターンアウトをすると、当然支える足の面積がかなり狭くなり、その狭い幅の上にきちんと上体を乗せて保てなければたちまちフラフラして倒れてしまいます。 しかし本当に付け根から開かないとそういう状態にもならず立ててしまい、間違った土台の上に間違った技術を積み重ねてしまうことになります。

ですから本当のバレエは先ずは付け根からのきちんとしたターンアウトを経験しないと始まらないといえるのです。そしてその先の訓練こそが一番難しく長い歳月を要するものになって来ます。

 

きちんとしたメソッドによる厳格なカリキュラムの大切さは、骨格や筋肉の成長と完成度合い、そこまでの土台の習得度に合わせて考慮された精密なプログラムであることが、構造学的にも実証されたものだからです。

 

メソッドにも様々ありますが、どういう違いなのか、どういう考え方によってそれぞれが成り立っているのかが最も大事なことで、形だけの理解ではダンサーの育て方の深い真理にまでは到達できないものと思います。

 

また、ターンアウトには様々な利点がありますが、その利点を発揮できるようになるにもかなりの訓練が必要です。上手く扱えるようになるまでの過程一つ一つが時間はかかりますがとても重要で、それが正しいメソッドによる教育法の確立の基盤となっています。

 

●基礎レッスンはポジションを正確にすることの上に更に困難な技術を積み重ねるために絶対に不可欠ですが、その完成途中にある体では難しい技術を行うことはどんなに個人差があろうとも殆ど不可能です。

もし出来ているとするならば、それは間違ったやり方、違った筋肉の使い方だからと言えます。

 

更に成長期で体が変わったりする中では出来ないことがあるのは極々当たり前のことです。

骨格が完成しないということは筋肉もまだ成長途中にあります。まだ不完全な状態の骨や筋肉で重心も定まらず体は日々変化しています。

なぜ、まだ体が完成しないうちに焦って技術を習得しない方が良いのか、体が未完成なうちに高度なテクニックに挑戦することがなぜいけないことなのか、もっと本気で理解しなくてはなりません。

 

●ターンアウトに適応する力は体の成長と骨格、筋肉の力に深く関わり、決して単なる運動能力やセンスだけでは対応しきれない、人体の構造学が関わっているものです。

 

コンクールなどに熱心になるあまり、体が未熟なうちに焦って高度な技術を習得しようとすることは、先々に本当に必要になる体の能力を育てるための妨げになり、後に花開く才能を潰しかねない危険な行為でさえあると言えるのです。

 

〈1〉バレエのレッスンで一番大切なことは何か